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足利市民のプライドを取り戻す試み(2)
平成19年、足利市は突如として「足利学校と足利氏の遺産」に関するユネスコ世界遺産への登録活動開始を発表した。


これはまあ、前提条件である国の登録リスト入りの段階であっさり却下されたわけだが、足利市はそれでもめげずに、同じ近世の教育資産を持つ茨城県水戸市、岡山県備前市、大分県日田市と連携を図りながら今も活動を継続中。

個人的にはその一報はとても衝撃的だった。「その手があったのか!」って感じ。だけどところがこの発表に、近隣都市民、そして当の足利市民でさえもが冷笑を浴びせかけた。

そりゃまあね、観光行政的には北の小京都とは言うけれど恥ずかしくて他県の人には言えないし、鎌倉市と姉妹都市結んでいるけど、当の鎌倉市民には「心外だ!」と憤慨される始末。(ソースは尾内 N=1)
だけどね、それじゃあそもそも、近隣都市のどこがこの暴挙に出られるのか? その「そもそも論」で捉えてみると、全く違った足利市が見えてくると思うのです。


さてここで、北関東における国宝、国の重要文化財の数を確認してみよう。

栃木県 169件
茨城県  74件
群馬県  56件

栃木県の数は茨城群馬の約3倍。では国宝に限ってみるとどうだろう。

栃木県 16件
茨城県  2件
群馬県  0件

では市町村で見てみるとどうなのだろう。
栃木県
日光市 12件
足利市  4件

茨城県
鹿嶋市 1件
土浦市 1件

群馬県 0件

次ぎに、一気に両毛5市に限って見てみよう。

足利市 国宝 4件、重要文化財 3件
桐生市 国宝 0件、重要文化財 6件(別注※を参照)
佐野市 国宝 0件、重要文化財 1件(ただし合併後)
太田市 国宝 0件、重要文化財 5件(ただし合併後)
館林市 国宝 0件、重要文化財 0件

ちなみにこの両毛地区には古墳群が多いので、国の史跡はどこもそれなりにある。ただし近世以降に限ると、国の史跡は圧倒的に足利市が多い。
また、確かに古墳は多いのだけど、たとえば三内丸山遺跡のような、それだけで観光資源となるほどの物は存在しないので、残念ながら古墳群を以てして存在をアピールするのは難しい。

そして足利市が世界遺産のよりどころとしている遺跡は、全てが近世に集中し、足利市が保有する全ての国宝、重要文化財の他に、3つの国の史跡が含まれるという「まとまり感」があり、やはり両毛地区にあって特筆されるものなのである。

さて、そのようなわけで、比較ばかりで申し訳ないとは思うのだけど、比較してみて分かったことは、笑われようが馬鹿にされようが、そもそも足利市以外の近隣都市に、世界遺産の登録を本気で考えるなんて芸当は出来ないわけで、それが足利市と足利市以外の大きな違い。言い方は悪いけど、そもそも足利市以外にはネタすらない。これが、この両毛地区の現実。

そしてどうしてこんな不毛な比較をしたかというと、前回指摘したとおり、足利市が自尊心を失った原因の一つとして近隣都市との比較が考えられるから。比較に比較で返すなんて、まるで子どもの口げんかみたいだが、足利市民が比較に囚われているなら比較でその呪縛から解放出来るかもしれない。本論はそういう意味でも「試み」であるのだ。

確かにこれだけを以て足利市民の自尊心をくすぐるのは難しいかもしれない。だけどどうだろう、せめて「(仮称)日本遺産」なんてものが出来たら、その末席に滑り込めるくらいの価値はあるのではないか。というか両毛地区にあって「産業・商業はみんなに任せた! だから文化はこの足利市に任せてくれ(キリッ」くらいのプライドは持ってもいいんじゃないか。そんなことを僕は思ってみたりする。

今回は、あまり露骨にやると各方面に角が立ちそうなので、かなりトーンダウンしたことをここに白状する。しかしそれでも言いたい事はぶれていない。

そもそも何もなかったら世界遺産登録活動なんて無謀なことは出来ない。そして近隣都市の方々が笑うのもごもっとも。真摯にご意見を拝聴しよう。しかし肝心の足利市民が笑うのは止めましょうよ。いいじゃないですか、こんな活動できる都市なんて、日本全国見渡したって滅多にないんだから。
そういう意味ではやっぱり足利市って、全国的にみても貴重な都市なんだと思うのです。



別注※
ただしここで桐生市の近代遺産に言及しないのは片手落ちだろう。桐生市には近代建造物が多く残され、特に重要文化財に指定されてい「旧群馬県衛生所」は明治初期の擬洋風建築で、保存状態も大変良く、その瀟洒なたたずまいはとても見応えがある。桐生市でもこれらの遺産を活用したいわゆる町おこしが行われているようで、足利市民である僕も大いに期待しているところである。
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