挨拶しない部下(下)
セッション2回目

Aさん「さっそく早めに出社してみたのですが、やっぱり彼から挨拶しました。それで分かったのですが、彼はそれまでも挨拶しないわけではなくて、声がとても小さいのです。ずっと独り言みたいに小さな声で挨拶していたようなんです」
コーチ「それは良いところに気付かれましたね」
Aさん「はい。これはちゃんと観察してみないと気づかないことでした。それと、そのとき彼が相手の方を見ないことも分かりました」
コーチ「なるほど。声も小さいしこっちも見ないから、まるで挨拶していないように感じられたんですね。では、これで問題というかテーマは変わりましたね。今までは『後輩が挨拶しない』ということでしたが、これからは『後輩の挨拶の声が小さい』になりますね。この新しいテーマに関してAさんはどう思いますか?」
Aさん「挨拶していることが分かったので、少し心のモヤモヤが晴れた感じです」
コーチ「では、もう少し心のモヤモヤを晴らすためには、どんなことができますか?」
Aさん「・・・彼と話してみようと思うんです」
コーチ「話してみるんですね」
Aさん「はい。観察して分かったことは、彼が相手を避けている感じがすることです。それは挨拶の時だけでなく、仕事の指示や打合せの時も同じだからです」
コーチ「そうだったんですかあ。その方は挨拶だけではなく、全体的に人を避けている感じがするんですね」
Aさん「はい。だから一度、話してみようと思います」
コーチ「どんな話をされますか?」
Aさん「そうですね。『声が小さい!』って叱るように言うのではなくて『挨拶、苦手なの?』みたいな感じで聞けたらいいと思います」
コーチ「それはいいですね。他には?」
Aさん「話しづらそうだったら、『文句がいいたいわけじゃないんだよ』って言ってあげようと思います」
コーチ「優しい言い方ですね。彼も心を開いてくれるかもしれませんね」

このように、観察課題によって、課題以外の多くの気づきを得ることは珍しいことではありません。
なぜなら、コンブレイナントは曇ったメガネで相手を見ている状態と同じなので、問題となっている出来事以外もほとんど見えていない(見ていない)からです。
そこで一つの観察課題を実行することにより、見えなかった(見てなかった)様々な新発見を得るのです。

また、このように観察課題によって、クライアントは「問題を述べる人」から「問題を解決しようとする人」に変化します。
この状態がカスタマータイプです。
カスタマーに変化したことが分かったとき初めて、行動課題を提案します。


セッション3回目

Aさん「びっくりすることが分かったんですよ」
コーチ「何があったんですか?」
Aさん「先日、彼と話したんですよ。彼が言うには、学生の時に先生に挨拶して無視されたことがあって、それがトラウマになって挨拶ができなくなっていた・・・・というんです」
コーチ「そうですかあ。そんなことがあったんですね」
Aさん「それと、相手の方を見ないのは、目を見るのが怖いからだとも言ってました」
コーチ「視線を合わせるのが苦手なんですね」
Aさん「だから、以前教わった『目を見るのが苦手なら相手の口元をぼんやり見ていれば楽になる』というのを教えてあげました」
コーチ「彼はなんと言ってました?」
Aさん「『それだったら出来そう』だと言ってました」
コーチ「よかったですね。思い切って話してみた甲斐がありましたね」
Aさん「はい。話しかけなければずっと彼を誤解したままでした。本当に話して良かったと思います」
コーチ「ところでその後、その方の挨拶に変化はありましたか?」
Aさん「そうですね。心持ち大きくなったかな。でも本当に少しだけ」
コーチ「もう少し大きな声で挨拶してほしいですか?」
Aさん「はい」
コーチ「では、まったく聞こえない挨拶を0として、百点満点の挨拶が10として、Aさんとしては今、どれくらいの声の大きさだと思いますか?」
Aさん「そうですね。・・・3くらいかな」
コーチ「3もあるんですね。まったく聞こえなかったときよりはずいぶんと進歩したじゃないですか!」
Aさん「そうですね」
コーチ「では3を4にするために、Aさんに出来ることは何でしょう?」
Aさん「出来ることですか?・・・そうですね。こちらからにこやかに彼の方を見ながら挨拶するとか」
コーチ「いいですね。と言うことは今まではにこやかではなかったんですか?」
Aさん「・・・そうなんですね(苦笑)」
コーチ「でも、その案はとてもいいと思います。ぜひ実行してみましょう。他にはいかかですか?」
Aさん「あとは・・・仕事中や休み時間にも積極的に話しかけてみようかな」
コーチ「それもいいですね。・・・今まではそういうこともあまり?」
Aさん「そうですね。しませんでしたね(苦笑)」
コーチ「では2つ、試すことが見つかれましたね。これは実行できそうですか?」
Aさん「はい。明日からでもできそうです」
コーチ「わかりました。では次回の報告を楽しみにしてます」


セッション4回目

Aさん「彼はだんだん自分からも話すようになってきました。こっちから話しかけるのも迷惑ではないみたいです。朝も、少し照れた感じで挨拶してくれるようになりました」
コーチ「よかったですね。心のモヤモヤはどうですか?」
Aさん「すっかりとは言えませんが、もう気にはならないです」
コーチ「それは良い変化ですね。ところで、彼の声の大きさはどうですか?前回は3くらいだということでしたが・・・」
Aさん「元気に挨拶するのはやっぱり苦手なようで・・・恥ずかしいのかな?今でも3か・・・4くらいかな」
コーチ「ああ、4くらいにはなったんですね。ところで、最高に元気な挨拶は10ということでしたが、Aさんとしては何点くらいだったらもう充分って感じでしょうか?」
Aさん「・・・今くらいでもいいと思うんですよ。それよりも、こっち向いてくれることの方が大事で、ぼそっとでも照れながらペコってしてくれるから、まあ思ったよりかわいいヤツだなーって思えてきましたしね。オレが一人前にしてやってもいいかなって」

※事例は本人の承諾を得て掲載しています。
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挨拶しない後輩(上)
コンプレイナントからカスタマーへ

Aさん(男性 32歳 製造業 会社員)

セッション1回目

半年前に配置転換で自分の班に来た20代前半の男性社員Bさんについての相談。

Bさんは態度は真面目で仕事もちゃんと出来ているが、朝の挨拶ができない。
Aさんは挨拶する。
しかしBさんは挨拶を返さない。
会社や社会というものは、後輩や年下の者から挨拶するのが当然ではないか?
異動前の班の知っている人に彼の様子を聞いてみたところ、以前の班でも挨拶をしていなかったとのこと。
「今の若者ってみんなこんな感じなんじゃないか?」
「だいたい、今の教育が間違っている」
と言われAさんも同感する。
挨拶は社会生活の基本だと思っている。
Aさんは子どもたちにも挨拶はちゃんとするようにいつも言って聞かせている。
とにかく挨拶、特に朝の挨拶は重要。
この挨拶をしない後輩に挨拶させることはできないだろうか?

まず、Aさんのタイプを仮定します。

ビジター    :何が問題なのかわからない
コンプレイナント:自分以外に問題があると思っている
カスタマー   :自分に問題があると思っている

Aさんは、「問題は挨拶をしないBさんにある」と考えていますから、Aさんのタイプはコンプレイナントです。

Aさんがコンプレイナントタイプであるならば、まずはAさんが困っている事実を認めて(受け止めて)あげる必要があります。そこで
「Aさんは、朝の挨拶をしない後輩のことで困ってるんですね」
と要約して返します。
「今の若者」や「今の教育」「社会生活の基本」等の話しは、Aさんの感想であって「挨拶しない後輩」
とは何の関係もありません。
これらに言及してしまうとテーマが逸れてしまう可能性があるので避けるのがいいでしょう。

次ぎは「事実確認の質問」です。

まず、Aさんの言っている「挨拶」とは具体的にどんなものなのかを確認します。
あくまで可能性の話しですが、Aさん自身がぼそぼそっと聞き取りにくい挨拶をしている場合もあり得るのです(自分のことを棚に上げて・・・というケースです)。そこで
「Aさんからは、具体的になんて挨拶しているのですか?」
と質問します。
そこでAさんが「『おはよー』とちゃんと聞こえるように言っています」と答えたなら、Aさんの感想に間違いがないことが分かります。

次ぎに、どんなシーンでそのやりとりが行われるのかを確認します。
可能性の話ですが、後輩が仕事に熱中している、職場がざわついていて朝の挨拶どころではない・・・という場合もあります。そこで
「その時、後輩の人はどんな様子ですか?何をしていますか?」
と質問します。
そこでAさんが「彼は機械の点検をしてたりとか、椅子に座ってボーッとしてます」と答えたなら、Aさんの感想に間違いがないことがわかります。

次は「例外探しの質問」です。

クライアントの話の中に「いつも」「常に」「必ず」という言葉があった場合は「例外探し」の質問をします。
例えば「一日中、落ち込んでいる」と言う人がいますが、詳しく聞いてみると「一日中=24時間」
落ち込んでいるわけではないことがわかります。
この例でいえば「落ち込んでいない時間」が「例外」です。
コーチングではこの「例外」を拡大していくことで問題解決を図ります。

そこでAさんには
「その後輩が、一度でも挨拶をしたことはありませんか? あったとしたら、それはどんな時でしたか?」
と質問します。
そこでAさんがしばらく考えた後、「そういえばありました」と答えたら、それがどんな場合だったか詳しく聞きましょう。

このケースの場合Aさんは
「後輩が挨拶したのは自分が後輩より先に出社していたときで、その時は後輩から挨拶してきました。ただしとても小さな声だった」と思い出しました。

さて、コンプレイナント(問題外在)タイプの方への課題(宿題)は「観察課題」です。
今回は、例外として確認できたシーンを再現してみることになりました。
つまり「一週間、自分の方が早く出社して、後輩が挨拶するかどうかを観察する」です。

クライアントがコンプレイナントの場合、「行動課題」を出すことはありません。
何故ならクライアントは「変わるべきなのは相手であって自分であるはずがない」と考えているからです。
また観察課題を出す場合も、印象が曖昧になることを防ぐためにも、観察結果をノートに記入してもらうようにするとより効果的です。

※事例は本人の承諾を得て掲載しています。
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外在化すると色々なことが見えてくる(下)
完結編です

『解決像を作る』

コーチ「ではちょっと視点をかえて。・・・Aさんはムシャドンを完璧に退治しちゃいたいと考えます? もう永遠にムシャドンとさよならしたいと」
Aさん「そうですね・・・いつもいつも後悔するくらいなら、いなくなってくれたほうが嬉しいけど・・・うーん」
コーチ「嬉しいけど?」
Aさん「・・・完璧に退治しなくちゃダメなんでしょうか?」
コーチ「というと?」
Aさん「・・・なんか矛盾してますが、まったくお菓子を食べない人生もなんだなって(苦笑)」
コーチ「味気ないですよね」
Aさん「そうなんですよー」
コーチ「では、どうなるのが理想ですか?」
Aさん「・・・共存共栄というのか・・・、とにかく食べてもあんなに落ち込まなければいいんです。後悔したり自分を否定するのが、もう辛くて」
コーチ「・・・では、ムシャドンの言いなりではなくて、Aさんの意志で間食するのはどうですか?」
Aさん「わたしの意志で?」
コーチ「はい。だって、間食するのは自分の意志ではなかったんですよ。本意ではないのにムシャドンに食べさせられていたわけ。だから、ムシャドンに命令される前に自分で決めちゃうってのはどうでしょう?」
Aさん「でもどうやって」
コーチ「たとえば。・・・・間食する日としない日を決めておくとか」
Aさん「そんなことしていいんですか?」
コーチ「ダメですか?」
Aさん「だって・・・せっかくダイエット頑張ってるのに。自分に負けたことにはなりませんか?」
コーチ「だって、ムシャドンに食べさせられても、体重は増えてないんでしょ?」
Aさん「それはそうなんですが・・・」
コーチ「どうやらムシャドンの心理攻撃は、とても長く持続するようですね」
Aさん「?」
コーチ「今の、『頑張ってるのだから間食は悪』とか、『自分に負けたことになる』って、ムシャドンが得意とする心理攻撃とそっくりだと思いません?」
Aさん「ああ〜・・・」
コーチ「ちょっと思い出して下さい。飲み会や宴会があるときは、たまには思い切り美味しい物を食べようと決めて食べて、そして充実感を得ているんですよね。どうしてそれはダイエットを頑張ってる自分に負けたことにはならないのでしょ?」
Aさん「・・・何故でしょう?変ですね、わたし」
コーチ「つまりAさんがきちっとコントロールできているからですよ。たまにいっぱい食べても大丈夫なダイエットをしてるから平気と。だからムシャドンは居酒屋には遠征してこない。だからどうでしょう。結果的に問題ないわけだし、間食もコントロールできるわけだし、コントロールして食べてもいいんじゃないでしょうか?」
Aさん「・・・確かに、コーチに色々教わってから、わたし割とカロリーには気を遣うようになって、それで今のダイエットが成功していると思ってるわけで、たまに少しお菓子を食べ過ぎたからって、急激にリバウンドはしないってわかってるんですよね」
コーチ「そうですよね、頑張りましたものね」
Aさん「はい。だからこそっていうか、なんか間食しちゃう自分が許せなかったというか、何度もリバウンドして、だから今回は完璧にやり遂げたいっていうか、そんな感じで」
コーチ「はい。リバウンド繰り返したからこそ、完璧を求めちゃうと。その気持ち、とてもよくわかります」
Aさん「でも・・・・・それが自分を追いつめていたのかも」
コーチ「はい。よく気がつきましたね」
Aさん「ええ(苦笑) 思い出してみればわたしって、今回は絶対に痩せる!絶対リバウンドしない!って言って、そして毎回リバウンドしてたんですけど(苦笑)」
コーチ「追いつめてましたね〜」
Aさん「はい。こういうのって必然ですよね」
コーチ「まあ、典型的な自滅のパターン(二人 笑う)」
Aさん「今度、カレンダーに間食していい日を書いてみようかと思います」
コーチ「あー、それいいですね。で、もし間食していい日じゃない日に食べたくなったらどうします?」
Aさん「・・・気にしないで食べることにします」
コーチ「はい。完璧です。あ、完璧はよくないのか(二人 笑う)」

※事例は本人の承諾を得て掲載しています。
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外在化すると色々なことが見えてくる(中)
前回の続きです

『被害状況を明らかにする』
コーチ「では次ぎに被害状況を明らかにしていきましょう」
Aさん「そんなこともやるんですか(笑)」
コーチ「はい。これも重要で(笑) では、ムシャドンが現れることで被害を被っているのは誰と誰ですか?」
Aさん「いえ、もうわたしだけじゃないですか」
コーチ「Aさん以外に被害者はいない?」
Aさん「いませんよ〜。いるわけないじゃないですか(笑)」
コーチ「では、具体的にどんな被害を受けています?」
Aさん「それは・・・せっかくダイエットしてるのに、日頃の努力を無駄にしてますよね」
コーチ「具体的に、ムシャドンのせいで何キロ太りました?」
Aさん「いやそんな、そんなくらいで体重は増えませんよ(苦笑)」
コーチ「なんだ、増えてはいないんですね。・・・よかった」
Aさん「そうですね。・・・・増えては、いないですね」
コーチ「・・・・では、日頃の努力を無駄にはしてないように感じるのですが・・・」
Aさん「・・・・そうですね」
コーチ「では、他の被害って何でしょう?」
Aさん「他ですか?・・・・なんていうか、すごく自分がイヤになります。わたしってダメだなー、落ち込んじゃいますね。泣きたくなるっていうか・・・」
コーチ「ムシャドンは、変な名前の割には心理攻撃が得意なようですね」
Aさん「ホントに(笑)」
コーチ「しかしムシャドンはひどいヤツだなあ。食べたからってダイエットに影響ないというのに、心理攻撃で、まるでAさんが最低のことをしたみたいに、泣きたくなるほど落ち込ませるなんて」
Aさん「・・・・」
コーチ「他には、被害はありますか?」
Aさん「あとは・・・あの、一気に食べるので、少し胸焼けがします」
コーチ「ああ、それも落ち込む原因になりますよね」
Aさん「・・・これくらいかな?」
コーチ「はい。かなり実態が明らかになってきました」
Aさん「はい」
コーチ「どうやらムシャドンは気が弱く、誰かがいると出てこれなくて、しかも出不精で部屋の中に閉じこもっていて、心理攻撃が得意というか、それしかないというか、こんな感じでいかがでしょう?」
Aさん「はい。意外なんで驚いています」
コーチ「本当はどんなヤツだと考えてました?」
Aさん「なんか、頑張っていたダイエットを全部ダメにしちゃう、とてもじゃないけど敵わない、とっても恐ろしいヤツだと思ってました」
コーチ「でも、どうやら実体は違うみたいですね」
Aさん「はい。・・・あまり怖くはないです」
コーチ「怖くないどころか?」
Aさん「弱っちーです(笑)」
コーチ「(笑)」

『嗜好を明らかにする』

コーチ「では整理してみましょう。ムシャドンの好物はなんでしょう?」
Aさん「好物?」
コーチ「そう、Aさんがどういう時に活発になるのか・・・」
Aさん「わたしが一人で部屋にいて・・・退屈な時、時間」
コーチ「退屈な時間がムシャドンの好物」
Aさん「はい。そう」
コーチ「ではムシャドンが苦手とするものは?」
Aさん「楽しいこととか、面白いこと、熱中したり集中すること、そういう時間」
コーチ「なるほど。とにかく退屈というか、何もすることがないと現れると」
Aさん「はい」

<(下)に続く>

※事例は本人の承諾を得て掲載しています。
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外在化すると色々なことが見えてくる(上)
ダイエット中なのに間食の習慣がやめられないAさん。
「外在化」を用いてコーチングを行うと、どんな変化が起こるでしょう?
実際のコーチングセッションを3回に分けて紹介します。


『生態を明らかにする』

Aさん「最初は少しだけって、少しなら大丈夫って。でも一口食べた途端に! ポテトチップでもチョコレートでも、一袋食べ終えるまで止められなくなるんです」
コーチ「何というか、そう言うときって、自分が自分じゃないって感じじゃないですか?」
Aさん「そうですね、自分でないみたいです」
コーチ「ではいっそそういうことにして、間食してしまうのはAさんの意志ではなくて、何者かがそうさせていると。だとしたら、そいつはどういうヤツなんでしょうか?とりあえず名前を付けてみましょう」
Aさん「名前ですかぁ?(驚く)」
コーチ「はい。たとえば・・・『ムシャドン』なんてのはどうですか?」
Aさん「『ムシャドン』? なんか名前だけで太りそう(笑)」
コーチ「センスないですか?(笑) Aさんの方でもっとぴったりの名前があれば・・・」
Aさん「いえ、いいです、それで。なんか簡単に倒せそうな感じだし(笑)」
コーチ「じゃあ『ムシャドン』で決定ですね。では早速なんですが、ムシャドンの生態を明らかにしていきましょうよ」
Aさん「生態ですか?」
コーチ「そう。敵と闘うにはまず事前調査が大切ってわけで・・ まずムシャドンは、どんなときにやってきますか?」
Aさん「そうですね、・・だいたい夜、です」
コーチ「もう少し詳しく、時系列的に」
Aさん「えー、平日は、何も予定がなければ7時くらいに帰ってくるので、今・・・低カロリーの雑炊にはまってるんですが、それを食べてから、食べながら、少しテレビを見たり、メールのチェックをしたり・・・そしてお風呂に入って、出てからまたテレビとか見ながらストレッチとかして、洗濯物畳んだり、で、一息ついたら、今カロリーオフのカクテルがマイブームで、一缶だけ飲むんですが、そのとき、やっぱり口寂しくなっちゃうんですよ」
コーチ「その瞬間、ムシャドンに襲われるんですね」
Aさん「そうなんです。それはもう突然に!」
コーチ「平日の夜以外に現れたことはありませんか?」
Aさん「あとは・・・、休みの日の、何もない日中とか」
コーチ「そのときカクテルは飲んでますか?」
Aさん「いえ、昼間は飲みません」
コーチ「では平日の夜と休みの日の日中。・・・外にいるときはいかがですか?」
Aさん「外では、大丈夫みたいですね、たぶん。・・・友達とカフェ行っても、ケーキセット一つ食べれば、お代わりとかしたことないと思うし・・・」
コーチ「飲み会とか宴会ではどうなんですか?」
Aさん「それは・・別です、別だと決めてます。美味しいものもたまには食べたいですよー、やっぱり。でもそれはなんというか・・・元々今日は食べるぞって決めてたし、間食とは違うと思ってます」
コーチ「それは自分の意志だからムシャドンとは違うと」
Aさん「はい」
コーチ「なるほど。つまりムシャドンはAさんが望まないときにやってくるって特性があるようです。・・・あと、一人ではなく、誰かといるときに現れたことはありますか?」
Aさん「・・・ないです、なかったです。誰かと一緒の時は、あまり考えません」
コーチ「なるほど。ではまず『一人で部屋にいるときにムシャドンは現れる』ってことが明白になりました。で、もう少し確認したいのですが、今言った『一人で部屋にいるとき』は必ずムシャドンがやってきますか?同じ条件でも来なかったことってありましたか?」
Aさん「・・・必ずではないですね、来ない日ありますねー。う〜ん、たとえばすごく見たかったテレビがある日とか、ネットのコミュが盛り上がっていて熱中しちゃったときとかは、気づいたときには空腹なんですが、結局そのまま食べないで寝ちゃってますね」
コーチ「食べないで寝られるんですか?!」
Aさん「ええ、そう言う時は、ですが」
コーチ「うーん、すごいなあ。それってとても偉いと思うんですよ」
Aさん「そうですか? そう言っていただけると嬉しいです」
コーチ「いえいえ、大したものです。で、常に空腹なときにムシャドンが現れるわけではない。これってとても意外ですよね、ちょっと驚きました。で、それを裏返してみると、いったいどう言うときに、どういうタイミングでムシャドンはやってくるんですか?」
Aさん「つまり・・・一人で・・・部屋にいて・・・、退屈な、時?」
コーチ「はい。どうやらムシャドンは、Aさんのそういうタイミングを狙って現れる、と考えて間違いないようです」

※事例は本人の承諾を得て掲載しています。
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意外な結論
コーチングで重要なのは、目標を寸分違わず実現することではなく当人の充実度が期待通りに得られるかどうかということ。
言葉にするのは簡単ですが、わたしたちはこの受け止め方がとても苦手なようです。

例えば転職するかどうかで悩んでいる友人に対して、あなたは誠意を持って会社に残ることを勧めていたとします。
しかし友人は悩んだ末に転職を選びました。
友人は、それが自分にとって充実度の高い選択だと思えたからそう結論したのです。
しかしあなたは、自分が勧めた道を友人が選択しなかったことで少しがっかりします。
素直に友人の選択を喜べません。
何だか裏切られたような気がします。
そして嫌味の一つも口に出してしまうかもしれません。

このケースで問題となるのは「友人の充実度」であって、決してあなたの充実度ではない。
あなたの充実度を問題とするのなら「あなた自身の問題」を語ればいいだけのことです。
しかし現実には、一緒に問題解決を考える過程で「あなたの問題」にもなってしまう。
コミュニケーションが一筋縄でいかないのは、こんな深層心理も影響しているのです。

このように、アドバイスする側にとって意外な結論が飛び出すことは珍しくありません。
どうしてそうなるのか?
これは「既に出ている結論の優位性をより強固にしたい」という心理が働くからです。
簡単に述べると「本当にこの答えで良いのか?」という不安です。
紛らわしいのは第二の選択肢として選ばれるのがとても魅力的だったり真っ当な案だったりするケースです。

例として取り上げるのはコーチング研修でのロールプレイの一コマです。
コーチ役も受講生です。
サッカー好きのAさんはこんな悩みを打ち明けてくれました。

Aさん「今はフットサルをやってるんですが、やっぱりちゃんとしたサッカーがやりたいんです。だけど11人集めるのが大変で、集まらなくて、どうすれば11人集められるか悩んでいるんです」
コーチ「今までどんなことをしてきましたか?」
Aさん「サッカーやってる友達に声かけたり、その友達の知り合いに声かけてもらったり」
コーチ「他には?」
Aさん「それだけです」
コーチ「では、他にどんなことが試せそうですか?思いつくことはありませんか?」
Aさん「・・・・わかりません」
コーチ「では・・・たとえばインターネットとかは利用できないでしょうか?」
Aさん「インターネットですか?」
コーチ「はい。インターネットを利用するとしたら、どんなことが出来ると思います?」
Aさん「そうですね・・・。近場のサッカー好きのホームページを探すとか」
コーチ「ああ、いいですね。他にはどうでしょう? 他にも利用できるものがあるかもしれませんね」
コーチ「・・・ミクシィとかで募集するとか」
コーチ「それもいいですね。ミクシィは登録されてますか?」
Aさん「ええ。ほとんど見てないですけど」
コーチ「では、試してみる価値はありそうですね。どうでしょう、試してみますか?」
Aさん「う・・・ん。なんかちょっと違うんですよね」
コーチ「はい。どんなところが違うんですか?」
Aさん「何というか・・・知らない人とチーム組むのは、ちょっと・・・」
コーチ「それは、よく知ってる仲間とやりたいってことでしょうか?」
Aさん「前も、何かでメンバー募集しようかと考えたことがあったんですが、結局やらなかったんですよ」
コーチ「そうだったんですかあ・・・ では一つお伺いしていいですか?」
Aさん「はい」
コーチ「Aさんの一番の望みは、よく知っているメンバーでサッカーをすることですか?それともサッカーをすることですか?」
Aさん「えー?」
コーチ「いかがでしょう?」
Aさん「そっかあ・・・そうですよね。はい、わたしはサッカーがやりたいです」
コーチ「Aさんにとっては、サッカーをすることが優先されることなんですね」
Aさん「はい。サッカーがやりたいです」
コーチ「では、どうしますか?」
Aさん「・・・・ホームページとかmixiを見てみます。同じ気持ちの人がいるかもしれないし」
コーチ「そうですね。Aさんと同じ悩みを抱えている人が身近にいるかもしれませんしね。では次回まで、インターネットで調べた結果を教えていただくことはできそうですか?」
Aさん「はい。大丈夫です」

このようにしてAさんは、チームのメンバーがなかなか集まらなかった理由が「知らない人とチームを組みたくない」という気持ちによるものだったということを知りました。
知った上で大事なのは「サッカーをすること」と納得し、インターネットでメンバーを募ることを最初の目標としました。
では一週間後の研修では、どうなったでしょう?

コーチ「前回のロープレで「サッカーのメンバーを集めるためにインターネットを理由する」ということを目標としましたが、いかがでしたか?」
Aさん「はい。実は・・・今までは夏で暑くて、暑いとサッカーとかフットサルってきついんですが、それでフットサルの方もあまり活動してなかったんですが、涼しくなったのでフットサルの活動が始まって、それが今、それなりに楽しいので、サッカーの人集めは来年でもいいかなと・・・・」

このように、想定していた展開とまったく異なる結論に至ることは少しも珍しいことではありません。
あなたがこの事例のコーチ役だったとしたら、どう感じますか?
「メンバー募集をするのが面倒だから、自分をごまかしているんじゃないか??」と考えますか?
実際そうかもしれません。
しれませんが、人は往々にしてこのような結論に達するのです。

この例はロールプレイだったので、コーチ役も先を急ぐあまり、情報収集をしませんでした。
正式なコーチングであればまず「最後にサッカーをしたのはいつか?」「フットサルはどのくらいの頻度でしているのか?」など具体的に聞き出します。
そうすることによって「暑いので実はフットサルもしばらくやっていない」というリソースが得られたかもしれません。
そうすればまったく違った展開になったかもしれません。
また、違った展開にならなかったとしても「しかし本当はやっぱり知らない人とチームを組むのはイヤだ」という想いの強さを引き出せたかもしれません。

いずれにしろアドバイスを受けると人は途端に考えが進展します。
しかしアドバイスした側の期待通りには進展しない。
それだけアドバイスは難しいということなのです。
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アドバイスをきっかけにする
コーチングの基本は、質問と承認技法でクライアントの「内部リソース=問題解決力」を刺激し、表在化させること。
しかし現実問題として、自分の中にリソースがない場合も存在します。
つまり「他に何か思いつきませんか?」と繰り返し質問しようが返答のしようがない。
そういうことも実際にはあります。
こういうときはどうすればいいのか?

例として取り上げるのはコーチング研修でのロールプレイの一コマです。
Aさんは、家族と一緒にキャンプに行きたいと考えていますが、何から手を付けたらいいかわからず困っています。
(研修ではこのように、とても身近な問題をテーマにしてスキルを学びます)

Aさん「もともと外で遊ぶのが大好きなんですよ。子どもも大きくなったのでキャンプとか行ってみたいのですが、まったくの初心者なので、どうすればいいかわからなくて・・・」

あなたならどう答えますか?
「○○すればいいんじゃない?」
「○○すれば?」
「○○するのがいいよ」
一般的には、こんな返答になると思います。
これらを「アドバイス=助言」といい、この助言を相手が受け容れるかどうかという展開になります。
つまり「あ、それいいね。やってみようかな」
「う〜ん、それはちょっと・・・」
「それ、もうやってみたよ」
等々
これではしかし思考の深化にはつながりません。
問いかけた側がアドバイスの中身を吟味する評論家になるだけです。
不思議なものでわたしたちは、お願いしてアドバイスを受けたというのに、そのアドバイスを評価しようとするのです。

だからコーチングではアドバイスはしない・・・ということはありません。
コーチもアドバイスします。
ただしコーチングにおけるアドバイスは、クライアントが受け容れるかどうかを目的とはしません。
あくまでもクライアントの内部リソースを刺激します。

コーチ「キャンプをするためには、どんなことを知っている必要があると思いますか?」
Aさん「そうですね。道具とか、どんなキャンプ場が初心者にはいいかとか、食事のこととかですか」
コーチ「そういうことは、どうすれば知ることができると思いますか?」
Aさん「経験者とか好きな人に聞ければいいと思います」
コーチ「そういう方は身近にいらっしゃいませんか?」
Aさん「それが、友達は誰もやらないんですよ。いたらよかったんですけどね」
コーチ「では、それ以外に何か思いつきません?」
Aさん「・・・・わかりません・・・」

Aさんは様々な分野に造詣が深く、話し上手で機転も利きます。
ところが一度苦手意識を持つと、「その問題に対して」は途端に思考が硬直化してしまうのです。
これは、Aさんだけではなく誰にでも起こりえることです。

コーチ「職場では聞いてみましたか?」
Aさん「職場?会社ですか?」
コーチ「そう。会社で聞いてみてはどうですか?一人くらいはキャンプ好きな方がいるんじゃないでしょうかね」
Aさん「そうかあ、会社ですね。まったく思いつきませんでした。それはいいかもしれません」
コーチ「まず会社で聞いてみることはできますよね。どうですか?他に何か思いついたことはありませんか?」
Aさん「スポーツ用品店に行ってみればいいかもしれない」
コーチ「それも名案ですね。スポーツ用品店なら詳しい店員がいるかもしれませんね。他にはどうですか? それとも2つあれば、まず第一歩を踏み出せそうですか?」
Aさん「そうですね。これだけで充分かもしれません。しかし恥ずかしいなあ。なんでこんな簡単なこと思いつかなかったんだろ」

コーチも状況によってはアドバイスをします。
しかし単なるアドバイスで済ませてしまっては、クライアントにとって何のプラスにもなりません。
人は、ちょっとしたことを切っ掛けにして眠っていた思考回路が活性化します。
そのスイッチが入ったタイミングを逃さず、コーチはクライアントの問題解決力を刺激します。
今回の例ではコーチのアドバイスと自ら考えついたものと2つの案が得られました。
自ら見出したのは(実は)1つでも、結果的に2つの案が得られたことで、クライアントは自信を深められます。
この自己肯定感がとても大事なのです。

この事例をセルフ・コーチングに役立てるなら、解決策が見つからず誰かにアドバイスを求めなければならないときは、他者が授けてくれたアドバイスの評論家にはならないという意識付けが大切です。

※事例は本人の承諾を得て掲載しています。
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自分のことをわかってない自分
考えている以上に、人は自分の心を把握していません。

以下はコーチング研修でのロールプレイの一コマです。

Aさんはこう話を切り出しました。
「最近、忘れっぽくて困ってるんですよ」

みなさんは、友達や家族がこう言ったとして、どう返事をしますか?

「もう歳だからね」
「最近じゃなくて昔からだろ」
「自分も同じ事を感じてるよ」等々

これが普通の会話で、わたしたちはずっと同じような会話を繰り返しているわけですが、深く考察してみると、Aさんの悩みはまったく解決されていないことにお気づきでしょうか?
(まあ、その通りなんだけど、忘れっぽいことは解決しないんだよなあ・・・)

ではどう返答すればいいのか?
事実を明らかにしてあげればいいのです。
コーチ「どんなことで、そう感じたのですか?」
Aさん「取引先に発想しなければならないものがあって、それが今日期限だったんですが、すっかり忘れていて、みんなに迷惑かけてしまったんです」
コーチ「そうですか、それは困ったでしょうね。ところでこの一週間で、どれくらい似たような体験がありましたか?」
Aさん「最近の一週間ですか?・・・・いえ、特にはありませんでした」
コーチ「そうですか。ではこの一ヶ月ではどうでしたか?」
Aさん「・・・・なかったですね・・・」
コーチ「Aさんが今日、仕事上で忘れたことにより困ったことは事実のようですが、どうやら『忘れっぽい』というほどのことはないみていですね。いかがですか?」
Aさん「そうですね。そんなに忘れてはいないですね」
コーチ「では少し見方を変えてみましょう」
Aさん「はい」
コーチ「Aさんは今日の出来事から、今後どうなればいいと思いますか?」
Aさん「どうなれば・・・ですか?」
コーチ「そう。どうなっていれば心配ないですか?」
Aさん「それは・・・うっかり忘れるミスを犯さないことですよね」
コーチ「うっかり忘れることが防げればいいんですね」
Aさん「はい」
コーチ「では、うっかり忘れることを防ぐために、すぐに出来ることは何かありますか?」
Aさん「・・・・スケジュールにちゃんと書いておくとか」
コーチ「スケジュールに書くんですね。それならちゃんと思い出せそうですね」
Aさん「はい」
コーチ「他には思い浮かびませんか?」
Aさん「後は・・・期日が近かったら、期日指定でさっさと発送してしまうとか」
コーチ「なるほど。それなら心配はないですね」

人はたった1回の出来事(ミスや失敗)だけで、自分はダメだと決めつけてしまったりします。
そういうことがたった数回続いただけで「自分は忘れっぽい」や「自分はミスが多い」が事実として一人歩きを始めます。
その結果が「解決手段を講じないまま時が過ぎ去る」という事態を招くのです。

語られていることは本当なのか?
思い込みや記憶違いをしてはいないか?
コーチングは自分の感じ方、受け取り方を批判的に確認する技術になります。

「自分って○○だなあ」とふとつぶやいたとき、「それって何を根拠に感じてるんだろう?」と疑ってみると、知らなかった自分が見えてくるかもしれません。

※事例は本人の承諾を得て掲載しています。
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見えないリソース
コーチングでは、問題解決に役立つ事柄全てをリソースと呼びます。
リソースには内部リソースと外部リソースがあります。
内部リソースとは、過去の類似成功体験や知識、経験など。
外部リソースとは、家族や友人知人、会社のスタッフ。更には有償のサービスなども含まれます。

今日は外部リソースについて、一つの事例を紹介します。

Aさんは中間管理職。
部下に仕事をおろしたいのだけど、部下は自分の仕事が手一杯でなかなか下ろせません。
そのせいでAさんは毎日残業続き。
とうとうAさん自身の仕事にも支障を来すようになってしまいました。

ここでリソース探しが役立ちます。

コーチ「Aさんは今、何名の部下をまとめていらっしゃるのですか?」
Aさん「今は・・・7人ですね」
コーチ「Aさんが自分の仕事をおろしたいと考えているのは、その中の何人ですか?」
Aさん「2人です」
コーチ「7人の中の2人の方なんですね」
Aさん「はい」
コーチ「しかしその2人はとても忙しいと。自分のことで手一杯で、こんな状態の時に自分が仕事をおろしたらどんでもないことになるんじゃないかと」
Aさん「ええ。はい」
コーチ「で、こんな状態の時に仕事をおろしては申し訳ないなあと感じてらっしゃるわけですね?」
Aさん「はい。その通りなんです。ちょっとどうにもならないというか・・・」
コーチ「ところで、ちょっとお伺いしたいのですが・・・その仕事はそのお二人以外には任せられない内容なんですか?」
Aさん「ん?・・・」
コーチ「えっとつまり、その仕事は、どうしてもそのお二人におろさなければならない、そういう理由なり事情がおありなのかと」
Aさん「いえ。・・・そんなことは・・・ないですね」
コーチ「そんなことはないんですね。では・・・どうしてそのお二人なのでしょう?」
Aさん「そうですね。う〜ん・・・考えたこともなかったなあ。・・・いや、どうしてなんでしょうね(苦笑)」
コーチ「ええ。どうしてなんでしょうね(笑)」
Aさん「まあ彼らがベテランだってこともあるし。そろそろ僕の仕事を任せてもいい頃かなと考えたことがあって・・・」
コーチ「でも、彼らにおろすと大変なことになりそうだし、そもそも彼らでなくてもいいんですよね?」
Aさん「そういうことみたいですね(笑)」
コーチ「そこでですね、今一度よく考えていただきたいのですが、Aさんにとって重要なのは、その2人の部下に仕事をおろすことなのですか?それとも、Aさんの仕事を誰かにおろして、Aさんが本来の業務に専念することなのですか?」
Aさん「・・・・・・・・・仕事をおろすことですよね」
コーチ「では、どうしてよりによって自分のことで手一杯な2人に仕事をおろそうとされていたんでしょう?」
Aさん「・・・・なるほど!そうですよね。どうしてそこにこだわっていたんだろ。仕事もそれなりに出来て多少は余裕のある部下が他にいるのに」

このセッションの後、Aさんは早速他の部下に仕事を教え始めました。
有能な管理職であっても、一度「○○に仕事をおろす」と決めてしまうと、○○にどうやって仕事をおろすかという視点から逃れられなくなります。

以上は実際のコーチング・セッションの例でしたが、ソリューショントークはセルフ・コーチングの中でももちろん使えます。
自分が思考の袋小路に入り込んでしまったと感じたら、積極的にリソース探しをしてみましょう。

※事例は本人の承諾を得て掲載しています。
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